30代半ばの頃、どうしてもある映画を作りたくて、最終的に主演・企画・製作・製作総指揮を務めたことがありました。それと同時に毎日、金策に駆けずり回っていました。
そういう私の姿を見て、親しくしていた大部屋の俳優さんが「これを使ってくれ」と、500万円もの大金を持ってきてくれたんです。実はそのお金は、事故で亡くなられたお父さんの保険金全額でした。
正直、ものすごく嬉しかったです。でも
「何を言っているんだ。気持ちだけで嬉しいよ。これは亡くなったお父さんのために使ってくれ」
と言って返しました。
そして金銭のやりとりはなくても、彼のことを「生涯の友」だと思いました。だからこそ、彼が俳優をやめて始めた事業が行き詰った時、私はできるだけのことをさせていただきました。それ以降、彼とは「何かあった時には損得を顧みず互いに助け合う仲」になっています。
お金というのはどれだけ持っていても、使えば無くなってしまいます。でも友情は使うほど増え、それが積み上がっていくと、兄妹以上・親以上のものになることもあります。
芸能界を去っても肩書きが無くなっても、友達は友達。私がこれまで芸能界や政治の世界でやれてきたのは、友情を大切にしてきたからだと思います。